フロイドローズ撤去→Tune-o-matic化 #1【killer編】

フロイドローズ撤去→Tune-o-matic化 #1【killer編】
改造の経緯: レスポールに装備されているようなTune-o-maticブリッジのギターを弾き慣れてきた者がフロイドローズ搭載のギターを弾くと起こる弊害。それは特に座って弾いた時にファインチューナーの出っ張りが手首に当たる不快感である。 しばらくの間フロイドローズ搭載のギターを使いフロイドローズは自分に合っていないことがわかり、 自分にとってのアームの不必要さ、ファインチューナーが手首にあたる不快さ、弦の張替え、チューニングのめんどくささ、以上の理由からTune-o-maticへの載せ替え改造をすることにした。

構造の決定: 改造するにあたりモデルとしたのはGreco MX800。ブリッジからストップバーまでの距離、角度を参考にした。 参考にした結果Tune-o-maticはボディザグリに埋め、弦は裏通しにすることにした。 killerは弦とボディの距離が短いため、ボディがフラットで尚且つボディとネックが一直線でつながり角度がついていないためである。 ストップバーではブリッジのサドルから角度がとれない。 すっきりした印象にしたいため、ブリッジはなるべく細いものを選んだ。裏通しストリングプッシュはESP製。

仕様: レギュラーチューニング、1ボリューム、コイルタップ。ハムバッカーの片方を+-逆につないでおりピックアップセレクターがセンター時にはフェイズサウンドになるよう配線してある。「Plastic Love in F major」の録音に使用。

試奏と再改造: 手首をブリッジに置いた時に感じる手首の違和感と不快感は不安定感は完全に解消された。 しばらく弾いて弦とボディ間の距離の短さにより弾いたピックがたまにボディに接触するのが気になるため、ネックに10mm程度のシムを入れた。

電気楽器の音に関する神話

エレキギターの形や木材、ハードウェアは音と大きく関係しいるでしょうがその影響は違うギター同士を比較しても差はでません。

楽器屋に行けばエレキギターの種類なんていくらでもあるのになぜわざわざ改造なんてするのでしょうか? エレキギターの音色を決定付ける最大の要素・部品はピックアップと弦です。音色の特性はコイルであるピックアップで決まり、ピックアップと弦の距離は出力/音量(生み出す電流の大きさ)と音の伸び(弦の揺れ)に影響を与えます。錆びた弦(特に123弦)との音色の違いは素人でも聞き分けられますしネックが反り音詰まりしては弦は振動し続けません。 この2つの要素がギター本体側の音を決める99%を担っているといってもよいでしょう。 そしてスピーカーキャビネットから音として出るまでにピック、弦の押さえ方、弦の弾き方、エフェクター、アンプなどの電子部品・機器の違いや設定により更に音色は大きく変化します。

エレキギターは金属の弦の振動がコイルに伝わり発生した電流が音となります。厳密に言えば弦を支える土台の状態は弦の振動に影響を与えますが、一般的なエレキギター同士、形、木材、ハードウェアなどの部品による違いが音へ与える影響は皆無と言えます。例え違いがあるにせよ聞き比べることは不可能で、例え聞き比べることができる人がいたらそれは毎日同じ環境で同じギターを弾いている本人だけでしょう。例え特殊な装置で測定してたとしてもアンプのメモリを1変えた音の違いと比べたら1000分の1程度でしょうし、例え木材の違いで音の伸びが変化するとしてもネックの調整や弦の状態による影響とくらべたら10000分の1程度でしょう。

オーストラリアのLa Trobe大学の研究者はエレキギターのボディが音へ与える影響はないと発表しています。一方Paul Reed Smithはピックアップだけが音の特性を決定付けるという意見には反対し、ピックアップは重要でありつつボディの鳴りがピックアップに影響を与えると意見しています(証明はしていないし実体験の意見でもない)。

この議論は宗教的な問題に近いため違いを聞き分けられると信じる人だけが気にすればよいでしょう。エレキの音は電子部品と機材で作るものです。 エレキギター選びで大切なポイントは見た目のカッコよさと弾きやすさ。 だから見た目のカッコいいギターを弾きやすいように改造するというわけです。

Killer Exploder Tune-o-matic Custom #1by anti-mainstream designer
フロイドローズ撤去→Tune-o-matic化 #1【killer編】
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元のザグリを埋める

ボディの表は再度別の穴を開けたりする必要があるのでザグリを埋めるのは必須。裏面に関してもブリッジブッシュの穴が深くまで到達するので最低でもその部分は埋める必要がある。今回はすべて埋めた。 のちに同じフロイドローズ撤去→Tune-o-matic化するRandom Starでは裏面のザグリを一部残したままにして電子部品を埋め込むスペースとして活用した。

埋める埋めないで音への影響はない。埋木材は元のボディと同じメープルを使用。当然埋め木材の違いによる音への影響はない。

  • 改造前:3.685 kg
  • 改造後:3.418 kg

新たなザグリの深さを決める

ボディーから弦(サドル)までの距離は8mmと仮定。ボディの厚さは42mm

  • ブリッジのザグリの深さ:10mm
  • ブリッジブッシュのザグリ深さ:20mm
フロイドローズ撤去→Tune-o-matic化 #1【killer編】ブリッジ配置設計

ロングスケールのネックのためブリッジの位置はナットから34インチ(864mm)に設置。ナット幅は42mm、1弦の弦落ちがあるためフロイドローズのナットは撤去し、新たに牛骨ナットを設置、調整が効くように接着はしていない。

 
フロイドローズ撤去→Tune-o-matic化 #1【killer編】裏通し配置設計フロント フロイドローズ撤去→Tune-o-matic化 #1【killer編】裏通し配置設計バック フロイドローズ撤去→Tune-o-matic化 #1【killer編】ブリッジザグリザイズ

裏通しストリングブッシュ位置を決める

裏通しストリングプッシュの位置はデザイン性、手首が当たった時の感触を考慮し水平に並べる。 斜めに配置するかはデザイン的な好みの問題である。

シールドジャックからコントロールまでの配線にぶつからない範囲の最長の位置。サドルからストリングブッシュまでの距離は34mm

角度と弦張

ストリングブッシュ位置と関係する問題はもう一つ。ブリッジからプッシュの角度による弦張の変化である。

X Japanのhideアーミーパンサー、アメーバペイズリーでは456弦が弦張を強くする目的で裏通し加工がされている。

支点(ブリッジサドル)への押し付ける力が強ければナット、ブリッジ間の張力は左右に逃げずに支点間で保たれるから原理的には弦張は強くなるように思われる。しかし、ブリッジ側は一定の強さで押し付けられていれば弦を引っ張ってもブリッジサドルと弦の接触位置はあまりずれることはない。それはブリッジのサドルとストップバー間をチューニング時に押してみれば確認できる。

むしろナット側のほうが弦がナットに押し付けられてる力は弱い傾向にあるため弦張を強くするならヘッドにテンションバーを付けたほうが効果的である。 実際にhideのアメーバペイズリーではヘッドにテンションバが搭載されている。

つまり、ブリッジ側の弦の角度はあまり浅いと弦張に影響を与えるが、ある一定以上の角度がついていれば変化はないのではないか、という仮説に辿り着いたのは改造後試奏してみた後であった。

サドルからブッシュの傾きを決める

フロイドローズ撤去→Tune-o-matic化 #1【killer編】ブリッジザグリ深さ設計

まだその仮説に辿りついていなかったため、弦角度を調整するために裏通しブッシュのザグリを何ミリにするかシミュレーションしていた。

裏通しブッシュはザグリを入れない場合の弦角度は11.02° ザグリを3.5mmで16.39°3.5mmザグリ加工したが、このザグリはのちのネックにシムを入れる改造でやらなくてもよかった加工になる。またこのザグリ部分にはほこりがたまりやすい。

※ピックアップザグリからブリッジブッシュのザグリに弦アース用の穴を開け、アース線をブリッジブッシュに落としている。

塗装: 木部用プライマーは不要。サンディングシーラー→やすり(#240-400)。ラッカー黒→やすり(#1000~#1500)。ラッカークリアは不要。

弦からボディーまでの距離を広げる

ネックシムの厚さ:5.1mm
弦ボディー間8mm過程で掘ったブリッジザグリ10mmを4mmへ埋め直し(ブリッジ最下部設定でボディー弦間 mm)